先日、サイトのステートメントを更新したときに古いステートメントを作った頃を思い出した。この先時間が経つと記憶もあいまいになりそうなので自分自身の整理のため書いておこうと。
以前のステートメント。
「撮り続けている被写体
私 の被写体は人が意識的にあるいは無意識に演じているドラマです。人は個々に人格が有り、生きてきた人生があります。これらはその人を取り巻く宗教観や社会 風土、親兄弟や友人たちにより築かれてきたものだと考えます。人間が暮らす社会では協調や摩擦、時として衝突が起き、それらのドラマが人に喜びや楽しさ、 悲しみや怒りを与えます。私はこれらのドラマに惹かれポートレートやスナップ写真を通してドラマを表現したいと考えています。」
これは2009年に参加した写真に関するレジメを英語で作るワークショップで作ったテキストの冒頭に出てくる部分だ。作った頃はステートメントと言うよりは、プロフィールの一部で「私はこのような考えで写真作品を創っています」とわかりやすくて観た人に伝えるのが目的だった。ワークショップでは撮った写真だけで無く、これまでの写真との関わり、時には人生を振り返りながらテキスト化していく半分カウンセリングのようなワークショップだった。海外まで含めた写真界隈のことはわからないがこの頃、写真で作品をつくるのに”プロジェクト”や”ステートメント”という単語を私はほとんど聞かなかった。写真展は写真とタイトルとキャプションで構成されていたと思う。
2009年のころはミャンマーの撮影は初め4年が経ち作品としてまとめようと考え始めた頃だった。それまで撮っていたのは近所、国内、国外のスナップがほとんどだった。今思うと旅先で撮って、ちょうどモノクロプリントの面白さを感じ始めていた頃だったからモノクロ映えしそうな被写体を探していた時期でも有った。一枚の写真として成立はしていたと思うが、個展や写真集などで自分で写真作品とし発表するには何か自分の核(当時はそれを漠然と”テーマ”と理解していた)になることが必要だと考えいた。
なのでワークショップを受けた理由の一つはその「テーマ」を見つけたかった。しかしこの「テーマ」がくせ者で根拠説明まで考えるとまとまらない。そんなものは無くても写真が良ければメーカ系ギャラリーに出して通って個展をすることもできるのだろう言う人も居て、自分もそうだろうなぁくらいは考えていた。
結局、どのような場所(ギャラリーの種類)で何を目指して発表したいのか、写真集を作りたいのか目標もビジョンもあいまいなまま写真を撮っていた。それでも楽しかったからそれはそれで良かったのかもしれないが。
そのような状況で受けたワークショップ。それでもこのレジメ(ステートメント含む)をつくる過程で自分が撮って作品にしていきたいことがある程度整理できていたように思える。そして私が幸運だったのは、それを実現できそうなミャンマーとの出会いがあったことだ。
2018年1月、2冊目のミャンマー写真集を世に送り出し、ホームページのステートメントに違和感を感じていたことを踏まえそ新たに書き換えたステートメント。
「私は現在、主に東南アジアのミャンマーで作品制作を続けています。
ミャンマーは2013年以降、新しい文明と古い文化が激突する激動の時代を迎えています。私は軍事政権下の2005年からミャンマーの人たちとその暮しを撮り続けています。ここで見る人々の強く透きとおった瞳は、かつて日本にもあったものだろうと思います。私はミャンマーが人々の幸福をたたえながら発展していくことを願いながら写真を撮り続けています。
ミャンマーは東南アジアに位置し、中国とインド、タイなどと国境を接し、人口は約6000万人、面積約68万平方キロメートルの国です。
最近まで軍政がひかれていましたが2015年に民政復帰後の総選挙でアウン=サン=スーチー氏率いる国民民主連合が勝利し、国際社会の注目する中民主政権が樹立され、欧米や中国、日本が次々に経済支援に参加し経済援助、直接投資を開始しました。
その結果、現在のミャンマーは劇的な変化をきたしています。経済、政治をはじめ、人々の暮らしにも、この状況は大きな変化を与えています。都市部の建設ラッシュと渋滞の激化、地方でも道路が整備され、森林が切り開かれ、人々の暮らしにも変化が訪れつつある一方、少数民族問題や現政権基盤の脆弱性など先行きの不安もあります。
私がミャンマーに惹かれるのは、国内の政治経済の変化が激しいにもかかわらず、そこに住む人々の眼差しの魅力を感じているからです。その眼差しは経済発展に伴う多様化などで変わらないのか変わってしまうのか、私はそれを見続けていきたいのです。」
前半の段落がそれにあたり、後半は補足説明になっている。できるだけ抽象的にせずシンプルに考えていることを述べるように心がけてつくった。写真に説明、言葉は要らないとの意見も理解できるが、私の作品に関しては言葉で補なったほうが伝わると思っている。
最期に以前のステートメントの英語。今は新しくしたステートメントの英語を作っているところだ。
My theme in photography is to convey attraction and humor of mankind.
My object is the conscious and unconscious act of human drama. Individuals have characters of their own and corresponding lives. I believe religious beliefs, native cultures, families and friends that surround each individual formed people. In the society where people live, harmony and friction, and sometimes collision occur. Those human dramas are the source of fun and joy, and sometimes sorrow and anger in our lives. I am intrigued by the drama and I fell humor and irony in them. I try to reproduce the drama through snapshots. I assume that I might be confirming what I desire to become or not to become. Through taking portraits, I may be seeking to get understanding and sympathy from others as well as to compliment my shortcomings.