今年もミャンマー祭りが終わった。2日間の短い展示だがほとんどの時間途切れることなく数十人が会場に居たように思え、恐らく1000人は越える人たちが来たと思う。
「日本・ミャンマー交流写真展」は公募のコンテスト入賞作品の展示、安倍昭恵さんの撮られたミャンマーの子供達の展示、そして企画展示の構成になっている。今回はこの企画展にヤンゴン在住の兵頭千夏さんと私の作品を各40点づつ展示させてもらった。
私の展示作品は昨年12月にギャラリー冬青で展示したものに追加、再構成した。兵頭さんはミャンマーの一年を季節・月毎に祭りやイベント、生活習慣などを活き活きと写した作品。私も知らないことが多く観に来た人たちも興味深く写真毎の説明を読んでいた。
今回、私も各写真に簡単な説明を付けたが、思っていた以上に読む人が多かった。写真だけで全てが伝わるのが理想なのだが、補足できるテキストは有効だ。特に今回のようなイベントでの展示は普段写真展に行かない人に見てもらうためには必須なのだろう。
予想はしていたが何人かに聞かれたのは「今でもフィルムって売ってるんですか?」とか「カラーで無いのはどうしてですか?」、「ミャンマーを撮り始めたきっかけは?」、「ミャンマーの魅力って何ですか?」などだった。
私自身は良く聞かれることなので答えはいつも決まっているが、それなりにみなさん納得していたようだ。
ただ、多くの人からはモノクロプリント自体新鮮で「美しいモノトーンの世界」、「被写体に引き込まれるようだ」、「ミャンマーへ行って見たくなった」、「被写体に対する亀山さんの気持ちが伝わって来ます」など好意的な言葉が多かった。
まぁ、ミャンマー祭りなのだからミャンマーが好きとか何かしらミャンマーに関係のある人たちなのだからその分は相当上乗せされているのだろうが。
また、コンテストではミャンマーで撮影を続けている若い友人たちが入賞し表彰を受けていた。今回の受賞が今後の撮影活動に大きなプラス、モチベーションになって行くことは彼らの表情やSNSの書き込みを見ると伝わってくる。その書き込みをにはこう書かれていた。
“「ミャンマーを旅して出逢う人々との瞬間を美しく切り取りたい」と云う理由で写真を撮り始めた自分にとって最も憧れていた写真展だったのでこの上なく幸せを感じています。”
大きなイベントは回を重ね、このようにして歴史を作っているのだと実感した。彼、新畑克也さんとは大塚のギャラリーで仲間とミャンマーの写真を展示していたのを見に行って知り合い、今年は横浜の綱島に有る旅カフェ「Point Weather」で新畑克也写真展をしていたのを観に行き、ミャンマーに対する熱い思いを目の当たりにした。彼はミャンマーで劣悪な環境に虐げられているロビンギャと呼ばれている人たちのところに通い撮影を続けている。昨年の総選挙で大勝したアウン=サン=スーチーシ率いるNLDが未だ何も解決に向けて動かない中、諸外国から人権問題として圧力をかけられているミャンマーが抱える闇の部分だ。彼が応募した作品はチン州の女性を窓越しに撮った一枚だった。もしかしたらロビンギャの人を撮ったのを出したかったのかもしれないが問題の根深さと難しさを考えた上の選択だったのだろうと。チンの女性は顔に独特の刺青をしている。チン州のあたりも少数民族が小競り合いを続けて来た歴史があり、一説には女性が拐われないように刺青で醜くしていると言われている。ロビンギャとは異なるがこれも理不尽な事柄という点では共通している。そう言った点もあるが写真として観ると画面構成、タイミングや表情などから伝わってくる強さは賞に値する作品で審査委員長の関口照生氏もコメントされていた。
今回もコンテストの審査を手伝わせてもらったが過去と比べて印象深い作品が多かった。大賞を取ったヤンゴン中央駅で撮られた一枚、何気無い水甕を美しく切り取った一枚などなど。また、時代を反映してドローンによる作品も見受けられ、次回以降さらに増えることだろう。
次回以降も何かしらの形でミャンマー祭りには関わり、ミャンマーと日本の架け橋の一端にでもなれればと思っている。
展示期間中、写真集を置かせてもらい、幸いなことに8冊買ってもらえた。初めて会って話をしただけだが何かしらが引っかかり購入に至ったのだと思うととても嬉しい。
写真集は1冊売れたら1000円を私が参加しているNPO法人“ミャンマーファミリー・クリニックと菜園の会(MFCG)”に寄附しミャンマーの無医村の人たちの自立支援に役立てようと決めている。これは今の私にできるわずかなミャンマーへの恩返しだ。
それと、本来だったら私も全力でMFCGのブースで、1人でも多くの人に活動の内容をしってもらい支援の輪を広げなければならなかったのだが、写真展会場にこもりっきりで何もできなかったのにも関わらず打ち上げで暖かく向かえてくれた仲間達に感謝感謝。
☆展示メモ
・会期:2016年11月26日10:00-18:00、27日10:00-16:00
・会場:東京芝増上寺内慈雲閣1階
日本・ミャンマー交流写真展企画展
銀塩モノクロプリント40点
・タイトル:「雨安居」
・展示説明:
私は2005年からミャンマーを訪れてますが最近は雨季の8月に行くことが多くなっています。ミャンマーは乾季と暑季、そして雨季の3つの季節があり、ガイドブックなどには観光に適しているのは11月から2月ごろまでの乾季と書かれています。確かに雨季は激しいスコールに遭遇し途方にくれる時もありますが、私がいつも訪れているシャン州のインレー湖はヤンゴンに比べると雨が降り続くことは少なく、晴れたり曇ったり所によりスコールが繰り返し、写真を撮るには変化を楽しむことができますし、オフシーズンのため普段は観光客の多い場所も静かで落ち着いて撮影が出来ます。どこかの軒下や僧院などで市場で買った果物をかじりながらノンビリと雨をやり過ごす時間も良いものです。
雨季に当たる7月から10月まで仏教では雨安居と呼ばれる期間になります。雨安居は悟りを開いた釈迦が弟子に教えを説いた時期とされ、その期間僧侶たちは遊行に出ることをせず僧院で修行に励み、病気などを除き外泊が許されません。
ミャンマーでは結婚式や引越し、会社設立など慶事に僧侶を招き盛大に寄進をしますがこの期間は僧侶が修行に籠るため慶事は控えることになるり、仏教徒が8割を超える国なので村々は静かで落ち着いた雰囲気を感じます。彼らに聞くと雨安居の期間はいつも以上に僧院へ通ったり寄進に励み得を積む日々を過ごす大切な時期と話してました。
昨今の急速な経済発展で様々な物を目にするようになったり、スマートフォンの普及で広い世界に触れる機会も増え社会全体が大きくて変わりつつある中でもミャンマーの人たちが一番彼ららしく暮らしている姿をフィルムに収めることが出来るのが雨安居の頃だと私は思っています。