2015年11月8日(日)、ミャンマーで選挙が行われた。おおよその結果はもう出ていて前評判通り、アウン・サン・スー・チー氏率いるNLD(国民民主連盟)が圧勝し過半数議席を獲得する勢いだ。現在のミャンマーの法律ではスー・チー氏は家族に外国籍の息子が居るため大統領になれない。
ミャンマーで法案を通すためには大統領の署名と議会の76%の賛成が必要とされている。しかし法律で25%は軍人が議席を持つことになっている。NLDが大統領になっても25%の軍人枠の中からNLD側に賛同する人が出てこない限り何も変えることは出来ない仕組みになっている。これは軍事政権時代に作られた憲法だから仕方無い。
これに対してスー・チー氏が言っているは「25%の中にもかならすミャンマーの将来を考え賛同する人が出てくることを信じてる」という内容だとミャンマーの友人から聞いた。
ミャンマーはビルマ族を始め100を超える民族が暮らし、宗教も仏教が多いが、キリスト教やイスラム教徒もいる他民族・他宗教国家だ。日本のような、ほぼ単民族で宗教心が薄い(私にはそう感じている)国に生まれて育った私には想像・理解が難しいが冷戦後の世界で起こっている紛争、テロの多くは宗教、民族に由来していることを考えると軍事政権という強権のフタが無くなったときに何が起こるのか心配にならざる得ない。
周辺の他民族国家を観ると軍事政権や一党独裁が多く、逆にそのくらいの強権がないと治まらないのかもしれないと思ってしまう。
2005年、私が初めてミャンマーを訪れたとき、軍事政権下でスー・チー氏は自宅に軟禁されていた。それでも旅行者からはミャンマーの人たちは平和で穏やかに日々の暮らしを営んでいるように見えた。
スー・チー氏は大統領になることは出来ない。NLDの誰かを大統領にしてスー・チー氏が実権を掌握するかのような発言が報道されている。西側諸国の民主主義国家からするとこの考えは憲法を無視した、極端に言えば独裁者になろうとしているように見えるかも知れない。そのようなことは英国や日本に留学していたスー・チー氏は当然承知しているはずであるが、その上で発言している真意はどこにあるのだろうか。
私のミャンマーの知人友人に以前、スー・チー氏が政権を取ったらどうなるのか?少し話をしたことがある。正直彼らも未知数で分からないと話していたが、軍事政権より良くなる未来に期待したいと言うのが本心なのだろう。
ただ、中東やアフリカなどの民族紛争を見ると少数民族と軍の戦闘や停戦合意のニュースを聞くと複雑だ。イギリスがビルマを植民地にしていたとき、植民地政策として多数を占めるビルマ族の目を宗主国へ向かせないため少数民族に資金と武器を供与していた。欧米の身勝手な植民地支配が現在の地域・民族紛争を生んでいると思うとミャンマーのこれからも考えてしまう。
イギリスの植民地から日本が植民地にしていたとき、日本がビルマに何をして、何を残したのか私はほとんど知らない。ミャンマーへ行くと日本人墓地が今でも綺麗に維持されてることや、私がミャンマーで知り合った老人の人から聞く日本軍の印象は悪くは無さそうも思える。(日本人の私に気を遣ってくれいているだけかもしれないが)
軍事政権を肯定、支持するわけではないが、現実的なミャンマーの政権運営を考えるとNLDと軍が敵対していては不幸な未来になると思わざる得ない。
写真は2012年、インレー湖のある村で魚の養殖プロジェクトについての話し合い。日曜で休みの学校の教室で開かれたシーン。日本では良くあることだろうが、ミャンマーの軍事政権下集会が禁じられていた時代を知っていたから、この光景は私にはとても感慨深いものだった。
軍事政権下では集会だけでは無く、満足な学校教育システムも崩壊させていた。それでも僧院の存在で子供達は読み書きを覚えていたそうだが、日本では当たり前の生活や一般知識、道徳教育など皆無で、それもこれから発展しようとしている国には厳しい現実だと思う。
ミャンマーの多くの一般の人たちは敬虔な仏教徒で人柄も穏やかで良い人が多い。今回の選挙で多少の混乱も起こるだろうが良い方向へ進むことを本当に願っている。